ナイキストの論文


Harry Nyquist, 1889.2 - 1976.4



学生の頃思った事
ナイキストの論文は電子工学や自動制御などの教科書にはお約束のように挙げられるが,実際にその論文を読んでいる人は殆どいない.読んでみようと論文のコピーサービスをしている所に手紙を書いたら,戦前の論文は扱っていないなんて返事だ.

色々調べると通信工学教室が持ってると分かったのでコピーさせてもらおうと行ったら何で物理の学生がこんな所に来るんだなんて対応だった.以下に書いてるように熱雑音の研究は統計力学や量子力学の深い理解が必要なのにね.
川は下流に行くほど幅が広くなるが学問は下流に行くほど幅が狭くなる傾向がある事を感じた.

何とかコピーさせてもらったが,無い論文があったので三菱の研究所に勤めている人にダメ元で頼んだらソコにあってそ の人は読んでいて色々教えてくれてコピ―をもらった.このとき思ったのはヤッパ旧財閥系の企業は違う.ソニー等の戦後パット出の企業ではこんな論文持っていないだろう.

ナイキストの研究の説明

以下の二つは電信の研究だが標本化定理の先駆だ.電信の通信速度は使われる周波数幅に比例し,毎秒 2N 個の異なった電流を送るなら,N より大きな周波数は無駄であることを示した.なお標本化定理の一般的, 厳密な証明は戦後間もなくシャノンによって与えられた.
Certain factors affecting telegraph speed". Bell System Technical Journal, 3, 324--346, 1924
http://archive.org/download/bstj3-2-324/bstj3-2-324.pdf

Certain Topics in Telegraph Transmission Theory 1928
http://www.ieee.org/publications_standards/publications/proceedings/nyquist.pdf


抵抗の熱雑音の研究.抵抗をケーブルに繋いで抵抗の熱雑音をケーブルに乗せその定在波のエネルギーより抵抗の熱雑音を求めるという巧妙なやり方で統計物理や分布定数回路の深い知識が必要な研究だ.古典物理を使っているが最後に量子力学の結果も書いている.
Thermal Agitation of Electric Charge in Conductors", Phys. Rev., Vol. 32, pp. 110--113, 1928
http://www.cs.cmu.edu/~sensing-sensors/readings/available_only_to_currently_registered_students/nyquist-p110_1.pdf


フィードバックシステムの安定判別の研究.オーディオで言えば発電機に帰還増幅器やLPやCDプレヤー等のサーボ機構だが,それだけでなく船や飛行機等の自動操縦システムの理論である.複素関数論の深い知識が必要な研究だ.
Regeneration theory", Bell System Technical Journal, vol. 11, pp. 126--147, 1932
http://media.johnwiley.com.au/product_data/excerpt/14/07803602/0780360214.pdf


自分なりの工夫 や発見ができ るように いろいろまとめてINDEX